境界を決めるということ

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後藤 智

経営学の研究者。専門はデザインマネジメント。デザインシンキング、エンジニアシンキング、マネジメントシンキング、アートシンキングの違いと使い所を研究している。この観点から学校教育に対する思うことを書いていきます。

デザイナーの重要な仕事の一つに、境界を決めるというお仕事があります。
この境界を決めるという感覚を意識すると、みなさんの日常は絶対楽になりますよ。

真っ白なキャンパス

さて、こんな例を考えてみましょう。
あなたは4人の友達と一つのグループを作っています。そのグループで旅行に行くことになりました。そして、あなたは幹事です。友達たちは「どこでも良いよ。好きなように決めてね。」と言っています。

あなたは何も制約がない真っ白なキャンパスの上で自由に筆を入れる権利を友人から託されたのです。

さて、あなたはハワイに行こうと考えました。
これにより、真っ白なキャンパスにハワイという境界が設定されました。
その境界の中は「ハワイに行く」で、境界の外は「ハワイに行かない」です。
この境界を設定し、友達に報告しました。すると友達はこういうのです。「ハワイには行きたいくない」と。「え、え、どこでも良い。任せるよ!って言ったじゃん!」
よくある話ですよね。

結論を先に言いましょう。
人は境界が設定された瞬間、好きなことを言う生き物なんです。逆に言うと境界を設定しないと、人は何も言えないのです。

境界の設定をいかにうまくやるか

さて、先ほどの例の時間を遡って、次は海外に行こうということを考えたとします。
この境界設定は、ハワイより大きな境界ですよね。
境界の中は「海外に行く」で、境界の外は「海外に行かない」です。容易に想像できると思いますが、ハワイの設定よりは、反発を受けにくくなります。
なぜなら、境界が大きく設定され、様々な意見がその境界の中に含まれるからです。

これが要するにインクルーシブな状態です。
最初の境界の設定次第で、その後の話の展開の大部分は決まってしまうのです。

それゆえに、デザイナーは常にクライアントの依頼に対してどのレベルで境界を設定するかを慎重に検討します。境界を広く設定しすぎると、逆にまた何を意見すれば良いかわからなくなってしまいます。
旅行の例でいうと、「地球に行こう」なんていうどでかい境界を設定してしまうと、提案された方は「お、おう。」と戸惑うしかないですよね。

バウンダリーオブジェクト

デザインの世界では、この境界を設定する役割を持つものをバウンダリーオブジェクトと言います。
例えば、製品開発におけるプロトタイプがこの役割を持ちます。
ユーザーテストをするときに、目の前にプロトタイプがあると、ユーザーは意見を言えるようになります。例えば、「あなたは何が欲しいですか?」と聞かれると案外わからないものですが、「あなたはこれが欲しいですか?」と聞かれると答えやすいですよね。

これは教育においても同じです。何か新しいことを生徒や学生に挑戦させるときに、どのような問いを設定するかによって境界が決まります。
あまりにも狭い境界を設定すると、その問いに対してYes/Noしか答える余地しか残りません。

先ほどの旅行の例でいうと、ハワイに行きたいか/行きたくないかということです。しかし、問いの境界が広すぎると逆に何を言えば良いかわからなくなります。「地球に行く」と言われて、何を言えば良いかわからないですよね。
みなさんも何を提案すればもっともスムーズに旅行の行き先が決められるかを是非考えてみてください。

今日はこの問いかけで終わります。

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