現象に真摯に向き合っていますか?

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後藤 智

経営学の研究者。専門はデザインマネジメント。デザインシンキング、エンジニアシンキング、マネジメントシンキング、アートシンキングの違いと使い所を研究している。この観点から学校教育に対する思うことを書いていきます。

今日は、デザイナーに特有な態度や姿勢について話しましょう。いくつかある中で一番初めに紹介しておきたいのが、デザイナーには「現象に真摯に向き合う」ことが求められるということです。

現象に真摯に向き合わない状態

まずは、現象に真摯に向き合わないことから説明した方が、理解していただけると思います。私のブログの中でなんども「あるものは絶対あるんだ!」派の人たちについて言及していますが、このような人たちは現象に真摯に向き合っていません。

例えば、あなたが別の誰かに「今日こんなことあったんです」と報告した時、「いや、そんなこと起こるはずがない。」って言う人、いますよね。目の前で起こったことに対して、「そんなこと起こるなんて、私の常識からすると、それは絶対間違っている。」って言う人、いますよね。あと、なんでもレッテルを貼って、「最近の若いもんは」的に、すぐに単純なカテゴリーに分類したがる人っていますよね。
こういう人は目の前で起こったり、聞いたりしたことが自分の常識で説明できなくなった瞬間、「そのような現象は起こるはずがない」と考えるのです。だって、このような人は自分の社会が世の中全ての人に通じる社会であって、自分の考えていることはみんなが考えていることと断定しているからです。いつも言っていますが、こういう考えを持った教員はアクティブラーニングで苦労します。「さぁ、自分たちで考えて、やってごらん」と言ってみたものの、プロセスや結果が自分の考えに合わなくなった瞬間、それを自分の考えに沿って修正しようとするからです。

現象に真摯に向き合う

それでは、現象に真摯に向き合う状態について説明します。
これは、とにかく目の前で起きたこと、誰かが言っていることを事実としてまず受け入れるという状態です。自分の今までの考えや経験はとりあえず一旦横に置いといて、「そんなことが起こったんだ」ということをまず受け入れるのです。このような考え方は、フッサールが提唱した現象学という学問の基礎にある考え方です。いつも私のブログで紹介する社会構成主義は、現象学を基礎に構築された考え方です。
この時、良いか悪いかという判断軸を持たないことが真摯に向き合うコツです。そもそも、良いか悪いかという判断は、自分の過去の経験から得られた判断軸で評価するものです。そのため、これをやってしまう時点で、現象に真摯に向き合えていません。ただ、好きか嫌いかはあるでしょう。人間ですから。

アクティブラーニングでこの態度・姿勢が求められるのは、一人一人の生徒や学生が自ら物事や勉強自体の意味を考え、その評価軸を設定し、それに向かって動いていくということが重要だからです。一人一人違って良いという時点で、もう何が出てくるかはやってみないとわかりません。毎年同じことをテーマに授業をしたところで、その対象の生徒や学生が違うんだから、やってみないと何が出てくるかわからないのです。これがアクティブラーニングのインプロビゼーション(即興)的要素です。

アクティブラーニングをする上で、あまり準備をし過ぎないというのは一つコツかもしれません。準備をしすぎると、その準備通りに「生徒や学生をコントロールしよう」という気持ち出てしまう可能性があります。それに対して、準備があまりできず、ぶっつけ本番の時って、案外人の話を聞こうとする姿勢が生まれやすいんですよ。なんでかっていうと、準備していないから、そこに参加している人の話を引き出さないと、場が持たないので。もし、周りにファシリテーションが上手な人がいれば聞いてみてください。案外、「準備できてないだけ」とか、「準備を前もってやるのが苦手」って言う人は多いですよ。準備をあまりしたくない結果、インプロビゼーション(即興)能力が高まってしまったパターンです。

準備をしっかりしてしまうと、どうしてもその準備通りにできたかどうかという絶対評価軸ができてしまいます。準備通りに行かないことを許せなくなるという意味です。こうなると、なかなか現場で起こる現象に真摯に向き合えません。自分の準備に対してしか真摯に向き合えないのです。
そのため、現象に真摯に向き合うためには、準備してた時には思いもつかなかった方向に進むことを良しとしなければなりません。むしろ、それこそが自分一人では向かえない方向に向かっていること、つまり共創なのです。これはダンスと創造性に関する記事でも紹介したことです。一人一人のダンスの癖や好みの結果起こる微妙なリズムの取り方の違いや振りの違い、このように起こった現象に真摯に向き合うことで、自分一人では達成できなかった新たな振り付けを実現するのです。

インプロビゼーションといえばジャズ。芸術の世界でも、パフォーマンスアートやライブアートと呼ばれる即興がありますね。このようなスキルは、アーティストに備わっているのです。なぜ、最近経営学でアート思考が流行しているか、本質の一つはこのあたりにあります。それは、アクティブラーニングとの共通点でもあります。つまり、アクティブラーニングや小学生でのダンス教育、大人の世界でのデザイン思考やアート思考は、全て現象学的に構築されているという共通点を持つのです。この点は教育に携わる人であればぜひ理解していただきたいところです。

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