リフレクションのコツは言語

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後藤 智

経営学の研究者。専門はデザインマネジメント。デザインシンキング、エンジニアシンキング、マネジメントシンキング、アートシンキングの違いと使い所を研究している。この観点から学校教育に対する思うことを書いていきます。

著名なデザイン研究者のDonald Schönは、「デザインとはReflective in Actionである」と言っています。

これは、デザインという人間の根源的営為は常に自分自身をリフレクション(内省)しながら、あるべき姿と今の現状のギャップを見つけ、改善する行為だということを意味しています。

リフレクション

最近、教育界では「リフレクション」は一つのキーワードになっているのではないでしょうか。リフレクションって誰でも簡単にできるものか?できるという人もたくさんいるでしょう。しかし、私の意見としてはリフレクションができるかどうかは言語能力が決定的に影響すると考えています。

これはどういうことかを、社会学者のGiddensの考え方を用いながら説明しましょう。Giddensは、人間の意識には言説的意識と実践的意識が存在すると言っています。

前者は、自分の行動や考えを常に言語で説明できるという状態で、後者は行動しているけど、よく考えると何でそんなことができているのか、なぜそんなことをやっているのかを言語で説明できない状態を意味しています。我々のルーティンは、ほぼ実践的意識上で行われます。あなたはなぜ歯磨きができているか言葉で説明できますか?我々人間は、言葉で説明できない非常に高度な行動を当たり前のようにできるのです。

言説的意識とリフレクション

さて、それではもし「あなたが歯磨きは○○筋を動かして、××グラムの力で歯ブラシを歯に当てている」なんて言語で説明できるとしましょう。そうするとどうなるか。「次は別の△△筋を動かして、□□グラム力を弱めてみよう」というように改善しようという気持ちになります。これが、誰もが行う根源的営為としてのデザインなのです。

このような気持ちになるのは、言語で行動を言説的意識に持っていくことで、自分の行動を理解するからです。理解は、言語なしに成立しません。そして、これがリフレクションです
かつてスポーツやっていた大人は、こんなこと考えるのではないでしょうか。「今の体の知識を持って高校生の時に戻れたら、自分はもっと上手くなっていたのに」的なことを。これ、かつてはもはや無意識的にルーティンでやっていた実践的意識レベルの運動を、大人になって賢くなって(言語を知って)言説的意識レベルの運動に変えられている、ということです。

こう考えると、まだまだ小さな子供にリフレクションをやってみなさいと言ってもそれが難しいことが簡単にわかりますよね。リフレクションをさせたかったら、まずはリフレクションの対象になる行動に対する言語を教えてあげなければなりません。そして、この言語こそ知識なのです。そうなんです、「知識は言語」なんです。

幼児の英会話教育とリフレクション

さて、リフレクション、さらに言うとデザインという人間の根源的営為活動は知識としての言語が重要だということはもうわかっていただきましたよね。

ここからは完全な私見であり、教育者と議論したことではないのでご注意いただきたいのですが、幼児に何も考えず、「グローバル社会だから!」的な理由だけで英会話教育を受けさせるのは、デザイン能力にマイナスの影響を与える可能性があると思います。
なぜなら、これは間違いないことなのですが、子供の言語の記憶容量は9歳程度までは限界があり、英語を覚えると、その分日本語の覚える領域を削っているという事実があるからです(10歳以上ぐらいになると、その影響はなくなるようです)。

東大の先生も言っていましたが、別に何歳から始めても英語は覚えられるようになります。実際に、私も31歳ぐらいから英語の勉強を真面目にやりましたが、そこそこ話せます。ちなみに1歳ぐらいまでで、幼児は自分の母国語を決定します。一度「自分は日本語を話すんだ!」と認識すると、そこから完全に日本語モードです。この日本語モードである事実にちゃんと向き合わなくてはなりません。

英語を教えることは悪いことではありません。英語も重要です。重要なことは、英語教育に傾倒せず、日本語教育をおろそかにしないということです。何事もバランスが重要です。

国語をバカにしてはいけません。
国語が「リフレクション能力」に、そして将来の「デザイン能力」につながるのです。将来子供をクリエイティブな人間に育てたかったら、国語をしっかり勉強させてあげてください。

今日は、少し話がそれましたね。これぐらいにしておきましょう。

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